VRで間近で観るキャラの顔のバランスはどうとるかの話
この記事はOculus Rift Advent Calendar 2018の5日目です。
VRだもん、キャラクターを間近で見たい! って思いますよね。
ところがどっこい、これが意外と難しいというお話です。
私は以前、VR内でキャラクターを鑑賞するコンテンツを製作を担当していた時期がありました。何作か担当したのですが、最初の頃の反応として多かったのは
顔がでかい!
というものだったんです。TVアニメからゲームから、実績豊富なCGスタジオに製作を依頼したキャラクターモデルだったので、クオリティは折り紙付きです。そんな3DモデルをVR内で見ると、なぜか「顔がでかい」という感想になるんです。
アニメの顔は実は大きい
高品位な3Dモデルとして多くの人に愛されているユニティちゃんと、フリー素材サイト「ぱくたそ」で見つけたモデルさんの写真を見比べてみましょう。肩のラインと、耳のラインにそれぞれ線を引いてみます。
先の引き方が雑で恐縮ですが、肩幅と顔の幅の比率を見ると、現実の人間は肩幅:顔幅はだいたい2:1くらいです。一方で、ユニティちゃんは明らかに顔幅が大きい(肩幅が小さいと言うべきなのかも)。
ただ、ユニティちゃんを見て、顔が大きいとは思わないはずです。アニメの絵は、だいたいこれくらいのバランスなので。おそらく、歴史の中でアニメ的な表現を突き詰めていくうちに、これくらいのバランスが良いと落ち着いたのでしょう。
それは、2次元の画面で見る場合の話です。VRという新しい表現に飛び込み、まるで現実のように感じる空間で、アニメのように顔幅が大きい表現を見ると「なんか顔でかい!」と思ってしまうのではないでしょうか。
じゃあどんなバランスがいいの?→フィギュアを参考にしました
困った私に微笑んでくれたのは、机に飾っていたアニメキャラのフィギュアでした。3次元空間にありながら、アニメキャラクターとしての可愛さを表現できている。キスしちゃいそうなほど間近で見てもまったく破綻がない。これだ!
というわけで、私は当時仕事を依頼していたCGスタジオに、肩幅と顔幅のバランスはフィギュアを参考にしてほしいとお願いしました。我ながらとんでもない依頼の仕方だったとは反省しておりますが、こうして出来上がって3Dモデルを組み込んだVRコンテンツは、「顔がでかい」というご意見もなく、お褒めの言葉をいただくことのほうが圧倒的に多かったです!
よくよく見てみると、フィギュアの体のバランスは、アニメの絵とはちょっと違うんです。同時に、3次元の人間に寄せすぎているわけでもない。立体物なのに、2次元キャラの可愛さを表現するデフォルメになっている。こんなにステキな蓄積があるのですから、参考にさせていただくほうがいいと思ったわけです。
というわけで、2次元コンテンツとVRコンテンツでは、キャラクターデザインの理屈が異なるのかもしれません。ちゃんとVR内で確認して、違和感を取り除く努力は無駄にならないと思います。そのときには、フィギュアが役に立つかもしれません。そうです、フィギュアを買うことは、VR空間を設計する上で重要な訓練なんです。業務上、買わざるを得ないものなんです!!!!!!
この文章が、机の上にフィギュアを並べがちな同志たちの励ましになることを願って!
(この記事は昨年のJapan VR Festで話した内容をブログにまとめ直したものです)